活字耽溺者の書評集

好きな本を自由気ままに書評するブログ。

HONZ書評

【書評】大志を抱かない生き方は許容されるか?『ドリーム・ハラスメント 「夢」で若者を追い詰める大人たち』(高部大問/イースト新書)

※この記事はHONZからの転載です。 大志を抱かない生き方は許容されるか? 本書は、大人たちの「夢を持て」「大志を抱け」という温かなアドバイスが数多の若者たちを苦しめている事実を剔出する一冊である。なんだそりゃ、軟弱すぎる、大袈裟だ、そんなわけな…

【書評】陰謀論や疑似科学のあやしげな論理を見抜く『まどわされない思考』(デヴィッド・ロバート・グライムス/長谷川圭訳/KADOKAWA)

※この記事はHONZからの転載です。 陰謀論や疑似科学のあやしげな論理を見抜く 著者の紹介から始めたい。デヴィッド・ロバート・グライムスは1985年アイルランド生まれの物理学者・ガン研究者で、BBCとアイルランド放送協会でコメンテーターとして活躍する傍…

【書評】今こそ、夢を楽しむべき時『夢の正体 夜の旅を科学する』(アリス・ロブ/川添節子訳/早川書房)

※本稿はHONZからの転載です。 今こそ、夢を楽しむべき時 まさかなるべく家に引きこもってろと叫ばれる時代が到来するとは思わなかった。評者はどちらかと言えばインドア人間なのでそこまで苦ではないが、あちこち出かけて買い物したり映画を観たり飲み歩いた…

【書評】依頼の77%は不倫調査! 奇々怪々な日本の不倫現場ノンフィクション『探偵の現場』(岡田真弓/角川新書)

※本稿はHONZからの転載です。 依頼の77%は不倫調査! 奇々怪々な日本の不倫現場ノンフィクション 探偵と聞くと、即座にユニークな名探偵たちの姿が思い浮かぶ。明晰な頭脳と驚異の観察眼を持ち、ヘビースモーカーで薬物中毒でもある世界一有名なあの顧問探偵…

【書評】『生まれてきたことが苦しいあなたに 最強のペシミスト・シオランの思想』(大谷崇/星海社新書)

※この記事はHONZからの転載です。 人生がどうしようもないほど暗くむなしいときに悲観を楽しむ方法論 告白しよう。評者はずっと、なるべく他人と関わりたくないと祈りながら生きてきた。楽しいことも悲しいことも何も経験したいと思わない。誰かと揉めたり争…

【書評】『毒薬の手帖 クロロホルムからタリウムまで 捜査官はいかにして毒殺を見破ることができたのか』(デボラ・ブラム/五十嵐加奈子訳/青土社)

※本稿はHONZからの転載です。 それはダーティな1920年代アメリカで躍動する鉄人毒物学者二人の泥臭く革新的な功績 たまらなく渋くてカッコいい主人公の紹介から始めたい。表紙の写真左、試験管を持つちょっと神経質そうな男が化学者アレグザンダー・ゲトラー…

【書評】『宇宙から帰ってきた日本人』(稲泉連/文藝春秋)

※この記事はHONZからの転載です。 あの名著から36年、宇宙は近くなりにけり 1983年、知的欲求旺盛なあるジャーナリストが一冊の本を上梓した。それは、米ソが宇宙開発戦争に明け暮れていた時代、母なる地球を離れ、宇宙へと向かった飛行士たちの精神的変化に…

【書評】『古典は本当に必要なのか、否定論者と議論して本気で考えてみた。』(勝又基編/文学通信)

※この記事はHONZからの転載です。 難問と相対する白熱の全記録 今年1月14日、ツイッターである話題がトレンドを席巻した。「#古典は本当に必要なのか」というハッシュタグに連なる論争である。震源は明星大学人文学部日本文学科が主催した同名シンポジウムだ…

【書評】『デジタル・ミニマリスト 本当に大切なことに集中する』(カル・ニューポート/池田真紀子訳/早川書房)

※この記事はHONZからの転載です。 膨大な弱いつながりを見つめ直し人間らしく生きる哲学 我々はSNSやソーシャルゲームに備わる巧妙で強い依存性のある仕掛けに心を絡め取られている――というのは、評者が先月レビューしたアダム・オルター『僕らはそれに抵抗…

【書評】『僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた』(アダム・オルター/上原裕美子訳/ダイヤモンド社)

※この記事はHONZからの転載です。 誘惑に勝てないのは意志が弱いせいじゃない スティーブ・ジョブズは自分の子供たちにiPadを使わせていなかった――彼はその影響力をもって世界中に自社のテクノロジーを広める一方で、プライベートでは極端なほどテクノロジー…

【書評】『犯罪学大図鑑』(DK社編/宮脇孝雄、遠藤裕子、大野晶子訳/三省堂)

※この記事はHONZからの転載です。 暗い好奇心を満たす豪華絢爛の著 つらい話は聞きたくない。陰惨なニュースなどもっと見たくない。気持ちが沈んでしまうから。しかしながらその一方で、我々はついついネガティヴな情報に耳をそばだてたり、詳報を集めたりし…

【書評】『「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本』(山下泰平/柏書房)

※この記事はHONZからの転載です。 忘れ去られしカオスな物語群にどっぷり浸かる もうタイトルからして「なんじゃこりゃ」だが、読み終わっても「なんじゃこりゃ」である。でも面白いんだから書評するより仕方ない。本書(通称・まいボコ)を一言で説明するな…

【書評】『ネコ・かわいい殺し屋 生態系への影響を科学する』(ピーター・P・マラ、クリス・サンテラ/岡奈理子訳/築地書館)

※この記事はHONZからの転載です。 野良ネコへの愛情はリスクを孕む 本書を読む少し前、環境省による奄美大島のノネコ(野生化したネコ)への対策が議論を呼んでいるとのニュース記事を読んだ。ノネコが国の特別天然記念物であるアマミノクロウサギなどを捕食…

【書評】『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(菅野久美子/毎日新聞出版)

※この記事はHONZからの転載です。 つらく、悲しく、身近に迫る死 読み進めるのが苦しい一冊だった。登場する人々が長く抱えてきた生きづらさが、とても他人事に思えなかったからだ。壮絶な「現場」の描写も相まって、一読するだけでも相当な根気がいる本であ…

【書評】『9つの脳の不思議な物語』(ヘレン・トムスン/仁木めぐみ訳/文藝春秋)

※この記事はHONZからの転載です。 脳が脳自身を理解できた日はきっと最高にロマンティック 思われるかもしれないが、評者は自分の人生より他人の人生に興味がある。自分の中では考えもしなかった生き方や着眼点、思考法を知ることにえもいわれぬスリルを感じ…

【書評】『ぼくと数学の旅に出よう 真理を追い求めた1万年の物語』(ミカエル・ロネー/山本知子、川口明百美訳/NHK出版)

※この記事はHONZからの転載です。 「数」に秘められた歴史と驚異、そして情熱 告白するが、筆者は数学が嫌いだ。大がつくほどに。中学時代は試験で平均点付近と、なんとかついて行けていたが、高校入学以後は赤点・追試続き。もううんざりだと、大学の進路は…

【書評】ことばを編むとき、人間模様が見えてくる――『辞書編集、三十七年』(神永曉/草思社)

※この記事はHONZからの転載 です。 ことばを編むとき、人間模様が見えてくる 本書の帯に、心惹かれるこんな一文がある。 辞書編集とは“刑罰”である。 これは、『日本国語大辞典(日国)』の第二版編集作業中の1999年11月、小学館辞書編集部にふらりと現れた…

【書評】『「日本の伝統」という幻想』 藤井青銅/柏書房

※この書評はHONZからの転載です。 時代の変わり目を前にして 平成の終わりが近づいている。といっても、元号が変わるだけで、生活にドラスティックな変化が訪れるわけではない。が、それでも、平成の世、もっと言えば日本がたどってきた道のりに思いを馳せて…

【書評】きわめて人間くさい動物園の物語――『東西ベルリン動物園大戦争』 ヤン・モーンハウプト/黒鳥英俊監修/赤坂桃子訳/CCCメディアハウス

※本稿はHONZからの転載です。 きわめて人間くさい動物園の物語 動物園業界には、「動物園人」という言葉があるらしい。動物や動物園のことを心から愛し、常に探究心と誇りを持って一生懸命動物園のために取り組む人のことを指し、時として人よりも動物相手の…

【書評】『進歩 人類の未来が明るい10の理由』 ヨハン・ノルベリ/山形浩生訳/晶文社

※この記事はHONZからの転載です。 悲観に入れ込みすぎないように ニュース番組を見て憂鬱になる。新聞やインターネットの記事を読んでげんなりする。暗い内容ばかりだからだ。シリア情勢、温暖化、テロに凶悪犯罪、不況、所得格差、貧困、差別、少子化・高齢…

伝統には無限サイクルがある――『「日本の伝統」の正体』著者インタビュー:藤井青銅氏

※この記事はHONZからの転載です。 去る1月中旬、こんなメールが筆者のもとに届いた。「追加取材をしませんか」 柏書房の編集部からのものだった。文面によれば、筆者が年初にHONZで書いた『「日本の伝統」の正体』(藤井青銅/柏書房)のレビューを皮切りに…

『「日本の伝統」の正体』 藤井青銅/柏書房

※この記事はHONZからの転載です。 言葉の魔力に振り回されないために 周りのみんながやっているから、乗り遅れないように私もやる――誰しも一度はこうした経験をしたことがあるのではないか。仲間外れは怖いものだ。多少ヘンな流行であっても、ついつい乗って…

『どうしても欲しい! 美術品蒐集家たちの執念とあやまちに関する研究』 エリン・L・トンプソン/松本裕訳/河出書房新社

※この記事はHONZからの転載です。 理想の自分に近づきたくて 世の中にはコレクターと呼ばれる人たちがいる。特定の事物を徹底的に蒐集する人々のことだ。切手や古いコイン、宝石といった貴重品から、食玩フィギュアのような玩具、映画の半券、果ては牛乳瓶の…

『森の探偵 無人カメラがとらえた日本の自然』 宮崎学、小原真史/亜紀書房

※この記事はHONZからの転載です。 人間社会に急接近する動物たち 長野県南部、中央アルプスと南アルプスに挟まれた伊那谷。この地を拠点に、半世紀にわたって活動してきた写真家がいる。本書の著者、宮崎学である。1947年、長野県の中川村に生まれた彼は、精…

『科学捜査ケースファイル』 ヴァル・マクダーミド/久保美代子訳/化学同人

※この記事はHONZからの転載です。 凶悪犯罪と法科学の歴史200年 科学捜査は、多くのミステリードラマや推理小説の題材として扱われてきた。代表的なのは、アメリカ発のテレビドラマ『CSI:科学捜査班』や『BONES─骨は語る─』シリーズだ。日本でも『科捜研の…

『歴史の証人 ホテル・リッツ』 ティラー・J・マッツェオ/羽田詩津子訳/東京創元社

※この記事はHONZからの転載です。 権力の交点となったホテルでの魅惑的な群像劇 パリの中心部、ヴァンドーム広場に面して、そのホテルは存在する。 ホテル・リッツ(Hôtel Ritz)。フランスの実業家セザール・リッツと名料理人オーギュスト・エスコフィエの…

『Mr.トルネード 藤田哲也 世界の空を救った男』 佐々木健一/文藝春秋

※この記事はHONZからの転載です。 嵐のような天才気象学者の生涯を追う 「とにかく私の人生は面白い。安定とは無縁だった」 気象学者、藤田・テッド(セオドア)・哲也は、自身の歩みを回顧して、そう語った。本書は、彼の生涯をつぶさに書きとめた評伝であ…

『ベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム』 ジョディ・アーチャー、マシュー・ジョッカーズ/西内啓監修/川添節子訳/日経BP社

※この記事はHONZからの転載です。 コンピューターによる文芸批評の時代 売れる小説を書きたい――作家を志す人ならば、一度は妄想する夢だろう。印税収入だけで暮らしていけたら、人生どんなに楽なことか。しかし、当然のごとく世の中は残酷で、運よくデビュー…