活字耽溺者の書評集

好きな本を自由気ままに書評するブログ。

ノンフィクション・人文書・研究書

【産経新聞より転載+補遺】『真夜中の北京』 ポール・フレンチ 笹山裕子訳 発行:エンジン・ルーム 発売:河出書房新社

※本記事は2015年9月27日付産経新聞読書面に掲載された書評に補遺を加えたものです。 www.sankei.com 3度の捜査で甦る真実 1937年1月の北京。凍てつく寒さの中、狐の精が棲むといわれる望楼・狐狸塔の下で、若い女性の惨殺死体が発見された。身元は、北京在…

『トマス・クイック 北欧最悪の連続殺人犯になった男』 ハンネス・ロースタム 田中文訳 早川書房

想像を絶する冤罪を暴いたジャーナリスト 本書に関しては「その後」から紹介したほうが良さそうだ。 去る2014年3月19日、スウェーデン・ファールンの精神科病棟にいたある男の釈放がニュースとなった。彼の名はストゥーレ・ベルグワール、またの名をトマス・…

『文章心得帖』 鶴見俊輔 ちくま学芸文庫

良い文章を書きたいと願って 書いた文章をさらすのは、いつになっても慣れない。文章には書き手の人となりがあらわれる。自分のありのままの姿をさらけだしているようなものだ。どう読まれるか、ちゃんと伝わるか、変なことを書いていないかと、書いている最…

『宇宙からの帰還』 立花隆 中公文庫

「神の視座」から見るとは およそ半世紀前、人類は初めて月に降り立った。米ソが宇宙開発競争に明け暮れていたこの時代、宇宙へ飛び立った宇宙飛行士は百人あまり。漆黒の宇宙に浮かぶ地球を見て、彼らは、何を感じ、どんなインパクトを受け、何が変化したの…

『空飛ぶ円盤が墜落した町へ 北南米編』 『ヒマラヤに雪男を探す アジア編』 (X51.ORG THE ODYSSEY) 佐藤健寿 河出文庫

ネットではわからない真実を探す旅 エリア51、ロズウェルUFO墜落事件、エスタンジア、シャンバラ、ヒマラヤの雪男……。オカルトマニアや『Xファイル』ファンが嬉々として反応する言葉だ。本稿で紹介する二冊は、Webサイト「X51.ORG」の管理人である著者が、20…

『謝るなら、いつでもおいで』 川名壮志 集英社

10年の歳月を経て 少年期にニュースで見聞きした事件や事故は、なぜか心に強く残っている。佐世保小六同級生殺害事件はその一つである。事件が発生した2004年6月1日、私もまた小学六年生だった。同い年の女の子が、同級生の女の子の首をカッターナイフで掻っ…

『スーパーセル 恐ろしくも美しい竜巻の驚異』 マイク・ホリングスヘッド エリック・グエン 小林文明監訳 小林政子訳 国書刊行会

竜巻に惹かれる者たち 竜巻を見るのが好きだ、と言っても、たいていは理解されない。当然と言えば当然である。日本で竜巻と言えば、2008年3月に竜巻注意情報の運用が開始され、ゲリラ豪雨と並ぶ昨今の異常気象の代表格として、日常生活を脅かす存在となって…

『異常気象と気候変動についてわかっていることいないこと』 筆保弘徳/川瀬宏明編 ベレ出版

「空の以心伝心」に挑む若き研究者たち 昨今、異常気象や地球温暖化がさかんに取り沙汰されるようになった。近年で最も厳しい寒さに見舞われた2012年冬。高知県で国内最高気温41.0度を更新した2013年夏。2014年2月の二週連続の大雪は、記憶に新しい人も多い…

『天気と気象についてわかっていることいないこと』 筆保弘徳/芳村圭編 ベレ出版

天気と気象相手に謎解き 日々を忙しなく暮らしていると、空を見上げることはほとんどない。せいぜい天気予報で、明日は雨だとか、真夏日だとかをチェックする程度であろう。しかし、空は想像を絶するエネルギーに満ちた、ミステリアスな空間なのである。 本…

『鼻行類』 ハラルト・シュテンプケ 日高敏隆・羽田節子訳 平凡社ライブラリー

虚構を現実化させる情熱 1941年、日本軍の捕虜収容所から脱走した男は、南海のハイアイアイ群島に漂着する。そこで彼が見たものは、鼻で歩行する哺乳類、“鼻行類”であった。本書は、その鼻行類の生態系や行動様式の詳細な観察記録だ。 ――という驚きの序文だ…