『孤独の歌声』 天童荒太 新潮文庫

孤独を憂う人へ贈る 本書は、タイトルどおり「孤独」をテーマに据えた小説である。孤独とは、他人との接触や関係が希薄な状態を指して使われる言葉だ。が、勘違いしてはならないのは、本書でいう孤独とは、現代的にいう「ひとりぼっち」や「集団に溶け込めない者」の単純な悲哀ではない。たとえ集団の中にいて、友人がたく…