活字耽溺者の書評集

好きな本を自由気ままに書評するブログ。

【読書日記】2019年、今年の三冊

※この記事は週刊読書人からの転載です。

頭痛がするほど面白い難題

 菅野久美子『超孤独死社会』(毎日新聞出版)は日本における孤独死の現状を凄絶な描写によって浮き彫りにするノンフィクション。亡くなった人々だけでなく遺族や特殊清掃人たちの人生にも光を当て、真に迫る重いリアリティを宿らせた一冊だ。

 ピーター・P・マラ/クリス・サンテラ『ネコ・かわいい殺し屋』(岡奈理子ほか訳、築地書館)は、野良ネコが生態系や公衆衛生に及ぼす多大な影響を丹念に示した研究書。愛護か駆除かで激しく揺れる人々の様を見るに、ネコの問題ながら人間の本質に深く切り込んだ書物でもある。

 勝又基編『古典は本当に必要なのか、否定論者と議論して本気で考えてみた。』(文学通信)は、今年1月14日のSNSトレンドを席巻した伝説のシンポジウムを紙上再現した白熱の全記録。肯定派は如何にして古典教育の必要性を説いていくか強く突きつけられている。

 以上三冊、どれも読んでいて頭が痛くなってくる難題だが、そこに愉悦を覚えてしまうのは私だけだろうか。

 

 さて、今年もお世話になりました。転載ばかりで、体調や気分で書いたり書かなかったりと変わらず雑なブログですが、来年はもう少しやる気出して生きていきたいと思います。