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活字耽溺者の書評集

翻訳ミステリ、サスペンス、ノンフィクション等の書評。産経新聞書評欄に不定期で寄稿。

『異常気象と気候変動についてわかっていることいないこと』 筆保弘徳/川瀬宏明編 ベレ出版

異常気象と気候変動についてわかっていることいないこと (BERET SCIENCE)

「空の以心伝心」に挑む若き研究者たち

 昨今、異常気象や地球温暖化がさかんに取り沙汰されるようになった。近年で最も厳しい寒さに見舞われた2012年冬。高知県で国内最高気温41.0度を更新した2013年夏。2014年2月の二週連続の大雪は、記憶に新しい人も多いのではないだろうか。ニュースで報じられているからというだけでなく、体感として「異常」を認識する場面が増加傾向にあるのは、誰もが頷くところであろう。

 本書は、そのような異常気象と気候変動の研究に取り組む若手研究者六人による研究書であり、前作『天気と気象についてわかっていることいないこと』に続く空企画シリーズの第二弾である。前作同様、研究書としての「カタさ」を極力排し、最前線の研究者がどのように異常気象と立ち向かっているのかを知れる興味深い一冊となっている。

 トピックは、熱帯、偏西風、寒波、日本の雪、大気汚染、太陽紫外線の六つ。集中豪雨や台風、竜巻などは前作で取り上げたため、本書は熱や気温、風に着眼点を置いて、様々な要素が絡み合う気象の謎解きに挑んでいる。

 前半では「異常気象」について論じられる。キーワードは「テレコネクション」。本書の中で、遠く離れた地域の間で気象がある関係を持って変動することを指して使われる言葉だ。

 まず「熱帯」の章では、もはや人口に膾炙したエルニーニョ現象ラニーニャ現象を中心に、熱帯の海水温と気温の変化が日本の気象に与える影響を説く。次章「偏西風」では、偏西風の蛇行によって、ヨーロッパの気候が日本にまで伝播するメカニズムが述べられる。続く「寒波」では、温暖化が寒波襲来の回数を減少させるとは言えないと予測を立てる。

 後半は「気候変動」。「雪」や「大気汚染」、「太陽紫外線」が与える変化を、近年の気象状況から解き明かす。前述の2014年の大雪や、PM2.5、UV、オゾン層の破壊と、温暖化の切っても切れない関係性が明示される。

 また、これも前作同様だが、章の内容とは別に、著者らの今現在の研究の進捗具合や、研究者を志した動機を伝える短いコラムも収録されている。気温や風など、取り扱われる現象は前作と比べるとやや取っ付きにくくなったものの、これらのコラムを読むだけでも現場の熱気を感じ取るには十分である。本書のテーマは「空の以心伝心」であるが、研究分野は若干違えども、彼らも以心伝心し合っているとしか思えないのは不思議である。

 

異常気象と気候変動についてわかっていることいないこと (BERET SCIENCE)

異常気象と気候変動についてわかっていることいないこと (BERET SCIENCE)

  • 作者: 筆保弘徳,川瀬宏明,梶川義幸,高谷康太郎,堀正岳,竹村俊彦,竹下秀
  • 出版社/メーカー: ベレ出版
  • 発売日: 2014/11/21
  • メディア: 単行本
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