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活字耽溺者の書評集

翻訳ミステリ、サスペンス、ノンフィクション等の書評。産経新聞書評欄に不定期で寄稿。

『天気と気象についてわかっていることいないこと』 筆保弘徳/芳村圭編 ベレ出版

天気と気象についてわかっていることいないこと (BERET SCIENCE)

天気と気象相手に謎解き

 日々を忙しなく暮らしていると、空を見上げることはほとんどない。せいぜい天気予報で、明日は雨だとか、真夏日だとかをチェックする程度であろう。しかし、空は想像を絶するエネルギーに満ちた、ミステリアスな空間なのである。

 本書は、天気と気象の研究に取りつかれた新進気鋭の若手研究者七人が、それぞれの分野の最先端の情報を伝える研究書である。しかし、専門的用語や難解な言い回しが並ぶ「カタい」研究書ではない。「気象学の基礎的なことを伝えるだけでなく、もっと違った視点から童心のように空の探求を楽しめるような本にしたい」とのコンセプトのもと、毎日の天気予報でふと浮かんだ疑問に、そばで答えてくれるような本なのである。

 トピックは、温帯低気圧、台風、竜巻、集中豪雨、梅雨、水循環、天気予報の七つ。

 例えば、台風は「地球上で最大最強かつ長寿の渦巻き」で、海上での水温が二十七度以上であること、大気が湿っていることなど、いくつかの条件がそろった時に発生するが、実はその詳しいメカニズムはわかっていない。

 竜巻については、アメリカで最も研究が進んでいるが、実は一人の日本人研究者が多大な功績を残していた。集中豪雨の章では、普段我々が身近に感じている水蒸気のエネルギーは「爆薬」であると述べられる。

 すべての章に共通しているのは、「モデル」と呼ばれる、大気の状態の時間変化を計算するコンピュータプログラムが非常に重要となっていること、そしてすべての気象の大本は「海」であることである。海洋のプランクトンが大気中の微粒子を生成し気象に影響を与えているなど、地球上にある様々な要素を加味しないと、より正確な天気予報ができないのだ。

 各章の内容とは別に挿入される、著者らの短いコラムも興味深い。天気と気象の「謎」の解明に入れ込むようになった動機や探究心についての語りは、熱に浮かされているようであり、ロマンティックでもある。推理小説にも通ずる部分があるのではないかと感じずにはいられない。

 

天気と気象についてわかっていることいないこと (BERET SCIENCE)

天気と気象についてわかっていることいないこと (BERET SCIENCE)