ノンフィクション・人文書・研究書
このブログをはじめてもう4年以上経つ。学生時代に、君の文章はお金になるから何か書いてみたらどうですかとすすめられたのが最初で、好き勝手書いているうち、新聞に寄稿させていただいたり、有名書評サイトのメンバーにお誘いいただいたりと、色々なお仕事…
※この記事はHONZからの転載 です。 ことばを編むとき、人間模様が見えてくる 本書の帯に、心惹かれるこんな一文がある。 辞書編集とは“刑罰”である。 これは、『日本国語大辞典(日国)』の第二版編集作業中の1999年11月、小学館辞書編集部にふらりと現れた…
※この書評はHONZからの転載です。 時代の変わり目を前にして 平成の終わりが近づいている。といっても、元号が変わるだけで、生活にドラスティックな変化が訪れるわけではない。が、それでも、平成の世、もっと言えば日本がたどってきた道のりに思いを馳せて…
汚い言葉は消え去るべきか 世の中には、公の場で口にすべきでない言葉がある。日本語で言うなら「クソ」「ちくしょう」「クズ」「アホ」、英語で言うなら「fuck」「shit」「cunt」「bugger」「bitch」などがそうだ。こうした言葉を学校や家庭で教わってきた…
ネットでは見えないものを追う 未知の不可抗力。1959年初めの冬、ソビエト連邦のウラル山脈で発生した遭難事故の最終報告書に載った「死亡原因」だ。亡くなったのは、ウラル工科大学の学生とOBから成る登山チーム9名。グループのリーダーの名前を取って「…
怒涛のハエ愛を食らうがよい 本書は多種多様なハエの生態を解説した本である。と同時に、ハエがとっても可愛く見えてくる一冊でもある。そんなバカな、と思われる向きが大多数だろうが、本当だ。なぜならば、著者の語り口がハエへの愛に満ち満ちているからだ…
※本稿はHONZからの転載です。 きわめて人間くさい動物園の物語 動物園業界には、「動物園人」という言葉があるらしい。動物や動物園のことを心から愛し、常に探究心と誇りを持って一生懸命動物園のために取り組む人のことを指し、時として人よりも動物相手の…
※この記事はHONZからの転載です。 悲観に入れ込みすぎないように ニュース番組を見て憂鬱になる。新聞やインターネットの記事を読んでげんなりする。暗い内容ばかりだからだ。シリア情勢、温暖化、テロに凶悪犯罪、不況、所得格差、貧困、差別、少子化・高齢…
※この記事は2018年4月14日発売の週刊読書人からの転載です。 数奇な運命を生き延びた若き歯科医の証言 1941年、ポーランドの小さな村に暮らしていた二一歳のユダヤ人歯科医学生の家に、魔の手が忍び寄る。ナチス・ドイツによる強制連行だ。父とともに収容所…
※この記事はHONZからの転載です。 去る1月中旬、こんなメールが筆者のもとに届いた。「追加取材をしませんか」 柏書房の編集部からのものだった。文面によれば、筆者が年初にHONZで書いた『「日本の伝統」の正体』(藤井青銅/柏書房)のレビューを皮切りに…
私事から始めるが、筆者は平成生まれである。昭和という時代、すなわち高度経済成長やらオイルショックやらバブル景気やらについて何も知らない。いや、知識として知ってはいるが、体験していない以上、どうも遠い世界の出来事に感じられてしまう。 閑話休題…
※この記事はHONZからの転載です。 言葉の魔力に振り回されないために 周りのみんながやっているから、乗り遅れないように私もやる――誰しも一度はこうした経験をしたことがあるのではないか。仲間外れは怖いものだ。多少ヘンな流行であっても、ついつい乗って…
辞典編纂者、iPad片手に小説世界で用例採集 本の読み方は、多種多様である。時間をかけて一冊の本を読み込む人もいれば、速読を是としてとんでもない勢いで読む人もいる。内容の解釈一つ取ってもその人の個性が出るので、SNSなどで読書感想を拾ってみるだけ…
※この記事はHONZからの転載です。 理想の自分に近づきたくて 世の中にはコレクターと呼ばれる人たちがいる。特定の事物を徹底的に蒐集する人々のことだ。切手や古いコイン、宝石といった貴重品から、食玩フィギュアのような玩具、映画の半券、果ては牛乳瓶の…
※この記事は10月13日発売の週刊読書人からの転載です。 過ぎ去った大きなうねりにゆれる心 南洋に浮かぶ島国パラオ。パリ講和会議直後の一九二〇年から太平洋戦争終結の一九四五年まで、この国は日本の委任統治領、すなわち植民地であった。南洋庁が設置され…
※この記事はHONZからの転載です。 人間社会に急接近する動物たち 長野県南部、中央アルプスと南アルプスに挟まれた伊那谷。この地を拠点に、半世紀にわたって活動してきた写真家がいる。本書の著者、宮崎学である。1947年、長野県の中川村に生まれた彼は、精…
※この記事はHONZからの転載です。 凶悪犯罪と法科学の歴史200年 科学捜査は、多くのミステリードラマや推理小説の題材として扱われてきた。代表的なのは、アメリカ発のテレビドラマ『CSI:科学捜査班』や『BONES─骨は語る─』シリーズだ。日本でも『科捜研の…
たかがカタツムリ、されどカタツムリ 「およそ200年前、ハワイの古くからの住民たちは、カタツムリが歌う、と信じていた。」 そんな、ファンタジー小説のような書き出しで始まる本書は、岩波科学ライブラリーから発売された至って真面目な科学書だ。著者は進…
※この記事はHONZからの転載です。 権力の交点となったホテルでの魅惑的な群像劇 パリの中心部、ヴァンドーム広場に面して、そのホテルは存在する。 ホテル・リッツ(Hôtel Ritz)。フランスの実業家セザール・リッツと名料理人オーギュスト・エスコフィエの…
※この記事はHONZからの転載です。 嵐のような天才気象学者の生涯を追う 「とにかく私の人生は面白い。安定とは無縁だった」 気象学者、藤田・テッド(セオドア)・哲也は、自身の歩みを回顧して、そう語った。本書は、彼の生涯をつぶさに書きとめた評伝であ…
※この記事はHONZからの転載です。 コンピューターによる文芸批評の時代 売れる小説を書きたい――作家を志す人ならば、一度は妄想する夢だろう。印税収入だけで暮らしていけたら、人生どんなに楽なことか。しかし、当然のごとく世の中は残酷で、運よくデビュー…
この記事はシミルボンからの転載です。 唯一無二の体験記 ゴールデン・トライアングル。そこは、タイ、ラオス、ビルマの三国が国境を接する、世界最大の麻薬生産地である。世界のアヘン系麻薬の60%から70%はここで栽培されたものだともいわれるこの《麻薬地…
※この記事はシミルボンからの転載です。 二つの熱気が衝突する瞬間 日比谷公会堂の檀上、短刀を水平に構えた白い顔の少年と、手を前に出し黒縁眼鏡がずり落ちた老政治家が立っている。17歳の右翼少年・山口二矢が、61歳の社会党委員長・浅沼稲次郎を襲撃した…
涙誘う、滅びゆく一つのエロ文化 帯に、「これまでも、これからも決して出版されない書籍の誕生。」とある。本書を読み終えて、まさしくその通りだと得心した。こんなの誰も真似できない。だいたいマニアックすぎる。一言で説明すると、全国に点在するエロ本…
※本稿は「週刊読書人」2017年4月14日号に掲載された書評の転載です。 若き声優志願者へ贈る言葉 今や声優は、若い人の間で高い人気を誇る職業の一つである。アニメ出演や洋画の吹き替え、ナレーションといった裏方仕事だけでなく、歌手となってコンサートを…
料理しながらゆるく楽しく学ぶ! 金曜日16時半すぎ、大阪大学豊中キャンパス、理学部学生実習室。15名ほどの学生が講義を受けている。科目名は「料理生物学入門」。今日は小麦粉を捏ねる作業が中心だ。 P(教授) 生地を寝かせている間に、今の作業が、小麦…
ボケを挟まないと死んじゃう鳥類学者 文筆家ではないのに、才気煥発な文を書く人がいる。著者もその一人であろう。簡単にプロフィールを書くと、本業は森林研究所の研究者。鳥類学を専門とし、テレビの自然番組や図鑑の監修を多く手掛けている。また、主な調…
膨大な資料で裏打ちされた力作解説本 本書の帯には、ゲームクリエイターの松野泰己氏が「これ、パクってイイ?」とコメントを寄せている。松野氏は、『オウガバトルシリーズ』や『FFⅫ』といった大作ゲームのシナリオ・舞台構築に携わった人物で、神話や歴史…
言語を覚えた先の世界へ誘う書評集 私は海外文学が好きだが、語学はからっきしダメである。英語ですら怪しい。だが、海外文学を読んでいると、舞台となる国の言葉についてもついつい知りたくなってしまう。 そんなわけで、語学を学びたいとよく思うのだが、…
※本稿は「週刊読書人」2016年6月17日号に掲載された書評の転載です。 著者から野枝への恋文 本書は、大正時代のアナキスト大杉栄のパートナーで、女性解放運動の元祖といわれる伊藤野枝の評伝だ。ただし、物騒なタイトルから察せられるように、常識や道徳観…