活字耽溺者の書評集

好きな本を自由気ままに書評するブログ。

ノンフィクション・人文書・研究書

【書評】『犯罪学大図鑑』(DK社編/宮脇孝雄、遠藤裕子、大野晶子訳/三省堂)

※この記事はHONZからの転載です。 暗い好奇心を満たす豪華絢爛の著 つらい話は聞きたくない。陰惨なニュースなどもっと見たくない。気持ちが沈んでしまうから。しかしながらその一方で、我々はついついネガティヴな情報に耳をそばだてたり、詳報を集めたりし…

【書評】『「舞姫」の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコにする最高の小説の世界が明治に存在したので20万字くらいかけて紹介する本』(山下泰平/柏書房)

※この記事はHONZからの転載です。 忘れ去られしカオスな物語群にどっぷり浸かる もうタイトルからして「なんじゃこりゃ」だが、読み終わっても「なんじゃこりゃ」である。でも面白いんだから書評するより仕方ない。本書(通称・まいボコ)を一言で説明するな…

【書評】『ネコ・かわいい殺し屋 生態系への影響を科学する』(ピーター・P・マラ、クリス・サンテラ/岡奈理子訳/築地書館)

※この記事はHONZからの転載です。 野良ネコへの愛情はリスクを孕む 本書を読む少し前、環境省による奄美大島のノネコ(野生化したネコ)への対策が議論を呼んでいるとのニュース記事を読んだ。ノネコが国の特別天然記念物であるアマミノクロウサギなどを捕食…

【書評】『超孤独死社会 特殊清掃の現場をたどる』(菅野久美子/毎日新聞出版)

※この記事はHONZからの転載です。 つらく、悲しく、身近に迫る死 読み進めるのが苦しい一冊だった。登場する人々が長く抱えてきた生きづらさが、とても他人事に思えなかったからだ。壮絶な「現場」の描写も相まって、一読するだけでも相当な根気がいる本であ…

【書評】『9つの脳の不思議な物語』(ヘレン・トムスン/仁木めぐみ訳/文藝春秋)

※この記事はHONZからの転載です。 脳が脳自身を理解できた日はきっと最高にロマンティック 思われるかもしれないが、評者は自分の人生より他人の人生に興味がある。自分の中では考えもしなかった生き方や着眼点、思考法を知ることにえもいわれぬスリルを感じ…

【書評】『ぼくと数学の旅に出よう 真理を追い求めた1万年の物語』(ミカエル・ロネー/山本知子、川口明百美訳/NHK出版)

※この記事はHONZからの転載です。 「数」に秘められた歴史と驚異、そして情熱 告白するが、筆者は数学が嫌いだ。大がつくほどに。中学時代は試験で平均点付近と、なんとかついて行けていたが、高校入学以後は赤点・追試続き。もううんざりだと、大学の進路は…

【読書日記】『僕らが働く理由、働かない理由、働けない理由』(稲泉連/文春文庫)

このブログをはじめてもう4年以上経つ。学生時代に、君の文章はお金になるから何か書いてみたらどうですかとすすめられたのが最初で、好き勝手書いているうち、新聞に寄稿させていただいたり、有名書評サイトのメンバーにお誘いいただいたりと、色々なお仕事…

【書評】ことばを編むとき、人間模様が見えてくる――『辞書編集、三十七年』(神永曉/草思社)

※この記事はHONZからの転載 です。 ことばを編むとき、人間模様が見えてくる 本書の帯に、心惹かれるこんな一文がある。 辞書編集とは“刑罰”である。 これは、『日本国語大辞典(日国)』の第二版編集作業中の1999年11月、小学館辞書編集部にふらりと現れた…

【書評】『「日本の伝統」という幻想』 藤井青銅/柏書房

※この書評はHONZからの転載です。 時代の変わり目を前にして 平成の終わりが近づいている。といっても、元号が変わるだけで、生活にドラスティックな変化が訪れるわけではない。が、それでも、平成の世、もっと言えば日本がたどってきた道のりに思いを馳せて…

【800字書評】汚い言葉は消え去るべきか――『悪態の科学 あなたはなぜ口にしてしまうのか』エマ・バーン/黒木章人訳/原書房

汚い言葉は消え去るべきか 世の中には、公の場で口にすべきでない言葉がある。日本語で言うなら「クソ」「ちくしょう」「クズ」「アホ」、英語で言うなら「fuck」「shit」「cunt」「bugger」「bitch」などがそうだ。こうした言葉を学校や家庭で教わってきた…

【800字書評】ネットでは見えないものを追う――『死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相』 ドニー・アイカー/安原和見訳/河出書房新社

ネットでは見えないものを追う 未知の不可抗力。1959年初めの冬、ソビエト連邦のウラル山脈で発生した遭難事故の最終報告書に載った「死亡原因」だ。亡くなったのは、ウラル工科大学の学生とOBから成る登山チーム9名。グループのリーダーの名前を取って「…

【800字書評】怒涛のハエ愛を食らうがよい――『蠅たちの隠された生活』 エリカ・マカリスター/桝永一宏監修/鴨志田恵訳/エクスナレッジ

怒涛のハエ愛を食らうがよい 本書は多種多様なハエの生態を解説した本である。と同時に、ハエがとっても可愛く見えてくる一冊でもある。そんなバカな、と思われる向きが大多数だろうが、本当だ。なぜならば、著者の語り口がハエへの愛に満ち満ちているからだ…

【書評】きわめて人間くさい動物園の物語――『東西ベルリン動物園大戦争』 ヤン・モーンハウプト/黒鳥英俊監修/赤坂桃子訳/CCCメディアハウス

※本稿はHONZからの転載です。 きわめて人間くさい動物園の物語 動物園業界には、「動物園人」という言葉があるらしい。動物や動物園のことを心から愛し、常に探究心と誇りを持って一生懸命動物園のために取り組む人のことを指し、時として人よりも動物相手の…

【書評】『進歩 人類の未来が明るい10の理由』 ヨハン・ノルベリ/山形浩生訳/晶文社

※この記事はHONZからの転載です。 悲観に入れ込みすぎないように ニュース番組を見て憂鬱になる。新聞やインターネットの記事を読んでげんなりする。暗い内容ばかりだからだ。シリア情勢、温暖化、テロに凶悪犯罪、不況、所得格差、貧困、差別、少子化・高齢…

『アウシュヴィッツの歯科医』 ベンジャミン・ジェイコブス/上田祥士監訳/向井和美訳/紀伊國屋書店

※この記事は2018年4月14日発売の週刊読書人からの転載です。 数奇な運命を生き延びた若き歯科医の証言 1941年、ポーランドの小さな村に暮らしていた二一歳のユダヤ人歯科医学生の家に、魔の手が忍び寄る。ナチス・ドイツによる強制連行だ。父とともに収容所…

伝統には無限サイクルがある――『「日本の伝統」の正体』著者インタビュー:藤井青銅氏

※この記事はHONZからの転載です。 去る1月中旬、こんなメールが筆者のもとに届いた。「追加取材をしませんか」 柏書房の編集部からのものだった。文面によれば、筆者が年初にHONZで書いた『「日本の伝統」の正体』(藤井青銅/柏書房)のレビューを皮切りに…

【800字書評】昭和の熱気を封じ込めた評伝――『コックリさんの父 中岡俊哉のオカルト人生』(岡本和明、辻堂真理/新潮社)

私事から始めるが、筆者は平成生まれである。昭和という時代、すなわち高度経済成長やらオイルショックやらバブル景気やらについて何も知らない。いや、知識として知ってはいるが、体験していない以上、どうも遠い世界の出来事に感じられてしまう。 閑話休題…

『「日本の伝統」の正体』 藤井青銅/柏書房

※この記事はHONZからの転載です。 言葉の魔力に振り回されないために 周りのみんながやっているから、乗り遅れないように私もやる――誰しも一度はこうした経験をしたことがあるのではないか。仲間外れは怖いものだ。多少ヘンな流行であっても、ついつい乗って…

【800字書評】『小説の言葉尻をとらえてみた』 飯間浩明/光文社新書

辞典編纂者、iPad片手に小説世界で用例採集 本の読み方は、多種多様である。時間をかけて一冊の本を読み込む人もいれば、速読を是としてとんでもない勢いで読む人もいる。内容の解釈一つ取ってもその人の個性が出るので、SNSなどで読書感想を拾ってみるだけ…

『どうしても欲しい! 美術品蒐集家たちの執念とあやまちに関する研究』 エリン・L・トンプソン/松本裕訳/河出書房新社

※この記事はHONZからの転載です。 理想の自分に近づきたくて 世の中にはコレクターと呼ばれる人たちがいる。特定の事物を徹底的に蒐集する人々のことだ。切手や古いコイン、宝石といった貴重品から、食玩フィギュアのような玩具、映画の半券、果ては牛乳瓶の…

『あのころのパラオをさがして 日本統治下のパラオを生きた人々』 寺尾紗穂/集英社

※この記事は10月13日発売の週刊読書人からの転載です。 過ぎ去った大きなうねりにゆれる心 南洋に浮かぶ島国パラオ。パリ講和会議直後の一九二〇年から太平洋戦争終結の一九四五年まで、この国は日本の委任統治領、すなわち植民地であった。南洋庁が設置され…

『森の探偵 無人カメラがとらえた日本の自然』 宮崎学、小原真史/亜紀書房

※この記事はHONZからの転載です。 人間社会に急接近する動物たち 長野県南部、中央アルプスと南アルプスに挟まれた伊那谷。この地を拠点に、半世紀にわたって活動してきた写真家がいる。本書の著者、宮崎学である。1947年、長野県の中川村に生まれた彼は、精…

『科学捜査ケースファイル』 ヴァル・マクダーミド/久保美代子訳/化学同人

※この記事はHONZからの転載です。 凶悪犯罪と法科学の歴史200年 科学捜査は、多くのミステリードラマや推理小説の題材として扱われてきた。代表的なのは、アメリカ発のテレビドラマ『CSI:科学捜査班』や『BONES─骨は語る─』シリーズだ。日本でも『科捜研の…

【週刊800字書評】『歌うカタツムリ 進化とらせんの物語』 千葉聡/岩波科学ライブラリー

たかがカタツムリ、されどカタツムリ 「およそ200年前、ハワイの古くからの住民たちは、カタツムリが歌う、と信じていた。」 そんな、ファンタジー小説のような書き出しで始まる本書は、岩波科学ライブラリーから発売された至って真面目な科学書だ。著者は進…

『歴史の証人 ホテル・リッツ』 ティラー・J・マッツェオ/羽田詩津子訳/東京創元社

※この記事はHONZからの転載です。 権力の交点となったホテルでの魅惑的な群像劇 パリの中心部、ヴァンドーム広場に面して、そのホテルは存在する。 ホテル・リッツ(Hôtel Ritz)。フランスの実業家セザール・リッツと名料理人オーギュスト・エスコフィエの…

『Mr.トルネード 藤田哲也 世界の空を救った男』 佐々木健一/文藝春秋

※この記事はHONZからの転載です。 嵐のような天才気象学者の生涯を追う 「とにかく私の人生は面白い。安定とは無縁だった」 気象学者、藤田・テッド(セオドア)・哲也は、自身の歩みを回顧して、そう語った。本書は、彼の生涯をつぶさに書きとめた評伝であ…

『ベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム』 ジョディ・アーチャー、マシュー・ジョッカーズ/西内啓監修/川添節子訳/日経BP社

※この記事はHONZからの転載です。 コンピューターによる文芸批評の時代 売れる小説を書きたい――作家を志す人ならば、一度は妄想する夢だろう。印税収入だけで暮らしていけたら、人生どんなに楽なことか。しかし、当然のごとく世の中は残酷で、運よくデビュー…

『アヘン王国潜入記』 高野秀行/集英社文庫

この記事はシミルボンからの転載です。 唯一無二の体験記 ゴールデン・トライアングル。そこは、タイ、ラオス、ビルマの三国が国境を接する、世界最大の麻薬生産地である。世界のアヘン系麻薬の60%から70%はここで栽培されたものだともいわれるこの《麻薬地…

『テロルの決算』 沢木耕太郎/文春文庫

※この記事はシミルボンからの転載です。 二つの熱気が衝突する瞬間 日比谷公会堂の檀上、短刀を水平に構えた白い顔の少年と、手を前に出し黒縁眼鏡がずり落ちた老政治家が立っている。17歳の右翼少年・山口二矢が、61歳の社会党委員長・浅沼稲次郎を襲撃した…

【週刊800字書評】『全国版 あの日のエロ本自販機探訪記』 黒沢哲哉/双葉社

涙誘う、滅びゆく一つのエロ文化 帯に、「これまでも、これからも決して出版されない書籍の誕生。」とある。本書を読み終えて、まさしくその通りだと得心した。こんなの誰も真似できない。だいたいマニアックすぎる。一言で説明すると、全国に点在するエロ本…