活字耽溺者の書評集

好きな本を自由気ままに書評するブログ。

2014-11-16から1日間の記事一覧

『その女アレックス』 ピエール・ルメートル 橘明美訳 文春文庫

プロットの妙を見る、現代サスペンス 見る角度によって絵柄が変わったり、立体感が得られたりする印刷物のことをレンチキュラーと呼ぶ。雑誌の付録などで馴染みのある人も多いのではないか。本書はそれを、小説でやってのけた、とんでもないサスペンス・ミス…

『幻の女』 ウイリアム・アイリッシュ 稲葉昭雄訳 ハヤカワ・ミステリ文庫

詩情を感じる、名訳古典サスペンス 「夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった。」 アメリカの推理作家ウイリアム・アイリッシュ(別名義コーネル・ウールリッチ)の代表作である本書は、こんな一文で幕を開ける。まだ英単語をち…